著者は精神科医で医療少年院で勤務している方で、発達障害関連の書籍もたくさん出していらっしゃいます。「発達障害」が近年とても増えていることに疑問を持ち、いくら発達障害ということが世間に認知されてきて、受診する人が増えたといっても増えすぎではないか。発達障害が生まれつきのものであって、遺伝的なものであるならこの増え方はちょっとおかしいぞと。筆者は「発達障害」と言われている人の中に「愛着障害」であるケースがあり、それが見落とされていると述べています。
スタンフォード大学の研究によると、自閉症スペクトラムの遺伝要因は4割以下というデータもあるようです。つまり、遺伝=生まれつきの要因もあるにはあるけど、育った環境がとても大きな影響を与えるということ。幼い頃の育て方次第で、その人の対人関係の持ち方や安心感、考え方のグランドデザインが決定されるのだそう。では、「愛着障害」とは?ですが、愛着はこどもと親(養育者)の間にできる絆のことで、生後1年半頃までの間に形成される。この時期に安定した愛着が形成されないと、後で取り戻すことは簡単ではないようです。もちろん、同じように育っても、養育者との関係に敏感でものすごく影響を受ける子とそうでない子がいるようです。
でも、生まれつきの遺伝要因はどうしようもないけど、まわりの環境が原因であった場合は改善することができる。批判や否定はせずに、自分の言いたいことはひとまずおいておいて、相手の言うことに耳を傾ける。相手のしていることに関心を向け、相手を受け止め、肯定し、関心や気持ちを共有しようとすることが大切だそう。そして安全基地となる養育者自身が不安定で悲観的だと子どもも安心できないとのことです。
あとは、そもそも発達の仕方が違うタイプが一定割合ずつ存在する。それは、どちらが優れているとか、どちらが正常かという問題ではなく、血液型が4種類あるように、異なるタイプである。単なる”特性”の違いにおいて、多数派のタイプを”健常”とし、そこから外れたものは”障害”とされる。でもそれは障害どころか強みや才能である場合も少なくない。とも書かれています。今日使われている発達障害の診断基準やその概念も十年もしたらすっかり変わっている可能性もあると。”特性”のことを”障害”と言うのはいかがなものかとも筆者は言っています。
つまり、親(養育者)がしっかり子どもと向き合って安全基地となってあげること(親も安定している)が大切。ということですね。10年ほど前の本なので、少しデータが古いところもあるだろうから、著者の新しい本も読んでみたいと思いました。
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